「好きに理由は存在しない。」

中学生の頃に愛読してた恋愛小説のヒロインが雨の中で叫んでいた。

アキバ系のオタクな男に愛を告白する場面で、世間一般的にダサ男と呼ばれている自分の何処を好きなんだと言う問いへの返事だ。

…本当…滑稽で、意味が解らない。

理由が存在しない事柄なんてこの世には存在しないのに。


「アキ、卒論のテーマ決まった?」
「テーマ?…んー、ぼちぼちかなぁ。とりあえず、資料集めと教授への発案は終わった―。」
「それでぼちぼちなの―?!天才は、ものさしの長さも違うってか。」
「そんな大袈裟なぁ。ちょっとばかり手際が良いだけよ。」
「…嫌味か、嫌味なのかぁ―っ。」

私は昼食を食べるために屋上に向かった。
8階建ての校舎のさらに上に位置するため景色も文句なし。
本来は立ち入り禁止になってるから存在すら知らない生徒の方が多いかもしれない。

私は今日も友人と2人で青空の下サンドイッチを頬張った。