空は暗闇が支配しサラリーマン達が足早に行き交う時刻。
それなのに沢山の塾生が勉学に励んでいる。
……11月だもんなぁ。
センター試験まで2ヶ月弱。
気合い入れたくもなるか。


……って他人事みたいに呟いてみたけど私もその中の一人じゃん!?

今日も学校サボって何やってんだ私…。
右手に持った紙袋の中を覗き込みため息が零れた。
無造作にしまわれた制服が今の私の危機感の無さを物語っている。



「ただいまー。」
「おかえり。……あら、もう8時じゃない。今日は遅かったわね。」
「…うん。来週の日曜は模試だから放課後は志望校別にクラス分けして課外があってるの。」
「そうなのぉ。今の高校ってのは入試対策に抜け目無いのね。これならアンタを塾に行かせる必要もないわね。」

台所から聞こえるノー天気な母の声に少しだけ罪悪感を感じた。
家の車庫で着替えを済ませた私は何食わぬ顔で帰宅したのだ。
制服の代わりに私服が押し込まれた紙袋を胸元に抱え足早に2階へ。
疲労困憊、そのままベッドに倒れこんだ。