18の秋の夜、私は愛しい人に手を引かれ国道沿いの河原を走り抜けた。
それは今までに感じたことがない解放感。
駅前の小さな歓楽街のネオンがどんどん遠ざかる中、涙で滲む視界に彼は確かに存在した。


途中で下駄の鼻緒が切れるわマスカラが落ちて不細工全開になるやら…。
せっかく気合い入れて可愛く決めてみたのに僅か数時間でボロボロ。

…ま、それでもハルは可愛いと言ってくれるはずだ。


「ちょ、ハルっっ!鼻緒が切れたっ。」
「ははっ、んじゃ、脱いじまえよっ。」

私は静止の意味も込めて言ったのに…。
彼は軽く笑い飛ばし足を止めない。
でも、速さを競歩程度に落としてくれたのだ。
本当に女の子の扱いを心得てる、というか……私の扱いを、かな。
彼のぶっきらぼうな優しさは私の心を温かくしてくれる。


私は言われたとおり裸足になり彼の手に引かれ続けた。


冷たい夜風が吹きつけ足が凍りそうなくらいに痛い。
だけどその痛みが教えてくれる。
この夢心地な時間が私の妄想でも空想でも夢でもないことを……。


――って言っても限界があるってのッ!!

「ハルっ!!流石に足が痛い。ってか…まだ花火まで時間あるし公園はすぐそこだし…とにかく、ちょっと止まって。」