「…あの先生、言葉の節々にトゲを感じない?」
「え?」

カーテンで仕切られた右隣のベッドから女の子の声が聞こえた。
反射的に疑問系の返事を返した私はゆっくりと開かれたカーテンの向こうから覗いた顔に瞳を見開く。

確か、彼女は……。

「…同じクラスの、佐倉さん…だよね。」
「ぁ、名前覚えててくれたんだ。嬉しい―。んと、そっちは宮原さんだよね。」

私は記憶を辿り曖昧ながらも彼女の名前を言い当てた。
すると彼女は嬉しそうに大きな瞳を輝かせて太陽のように明るく笑ったのだ。



――この時、私は既に恋に落ちていたのかもしれない。




「…具合、悪いの?」


って……、何意味不明な事聞いてるんだろう。

私は自分の投げかけた質問の陳腐さに失笑した。
具合が悪いから保健室にいるのに。
だが、彼女から返ってきた言葉は意外なものだった。

「んー、まぁ、簡単に言えばサボリ。なかなかクラスに馴染めなくて面倒臭くなっちゃってさ。」
「そーなんだ……。」
舌を軽く出し苦笑する彼女に私は親近感を覚えた。


友達になりたい。



この退屈で息苦しい毎日が一変して薔薇色の毎日が訪れるはずだ。