私の好きな彼女、私を愛した彼氏

「誰かさんと違って私デリケートだから…。」
「それはそれは…。3年近く親友してるけど初耳デスね。」

緊張の欠片も感じられないその口調が憎たらしくなり、私は嫌みの一つでも言ってやろうと彼女を振り返った。


…だけど…。


私は言葉を失ってしまった。



「ぇ…ハ…ル?」
「はい、ハル君です。……どう?似合う?」

やっとの思いで口にした言葉は実に陳腐なもの。
アカネの返事も苦笑混じりだ。

「アカネ…髪切ったの?」
「うん…。こっちの方がよりハルらしくない?」
「ぁ……うん。まさか、役作りのために髪を?」
「まぁね。……私なりの決意かな。中途半端はもう辞めようと思ってさ。」

そう言ってアカネは短くなった襟足を触ってみせた。
白くて綺麗な首筋が露わになり私は喉を鳴らす。
不謹慎だって解ってるのに欲情してしまったのだ―――――。




……そして私達が半年近くの時間を費やし作り上げた舞台は幕を開けた。



終わってみると正直内容は薄ら覚え。
あれほど意気込んでいたのにね。
最終的にはこんなもんかなぁと呟いてしまうくらい。
高校時代の素敵な思い出の一つとして私の心のアルバムに飾られたのだった。