―――現実ではどうなんだろうね……。



私は舞台の袖に立ち大きく深呼吸をした。
実は私達の前のクラスが同じ純愛ラブストーリーを演じ、その完成度の高さに観客が涙してしまったのだ。
己のクジ運の悪さを呪い千葉ちゃんは凹んで手に負えない状態だし…。

非常にやり難い…。
本番当日までどのクラスも練習は非公開。
こんな落とし穴が待ってるなんて誰も予想してなかったはず。
今更ながら自信がなくなってきたよ。


まるで負け試合に挑む感じ――。
完全に意気消沈した私は肩を落し空を仰いだ。
その中で裏方のスタッフ達は慌ただしく走り回っている。
この声援が聞こえてないのだろう…。
舞台に立つ役者達は大半が私と同じように俯き逃げ腰になっていた。

「…柄にもなく緊張ですか?アキさん。」
「…アカネさん…柄にもなくは余計ですよ。」

私は背後から聞こえた声に振り向かずに返事した。
声の主など顔を見なくてもすぐに解る。
相変わらずというか、何というか…。
緊張のかけらも感じさせない弾んだ声に私は苦笑を浮かべた。