『考えてみたら俺等ってデートらしいデートした事ないよなぁ。カラオケか学校かじゃん。デートの定番と言えばやっぱりお祭りでしょ。』
「いや、定番は遊園地か映画だと…。」

ハルの陽気な声につられ思わず突っ込みを入れてしまった自分が悲しい。
でも……それくらいハルは普通だったのだ。

『んだよ、他の奴等と同じじゃ面白くねぇだろ。』
「あのねぇ、それじゃ定番とは言わないでしょ。」

…ぁ、私笑ってる。

それは不思議なくらいに穏やかで幸せな時間だった。

『とにかくだ、行くの?行かないの?』
「…行く。」






…迷う余地などなかった。

彼は私を虜にする術を知り尽くしている。
行かない、なんて……死んでも口に出来なかった。
きっとハルには最初から全てお見通しだったんだね。
類を見ない策士家だよ本当に。

ハルを避け続けていた私の努力も苦労も全て水の泡――――――。



どうせ避けられない別れなら…。

何で残された時間をもっと大事に過ごさなかったんだろう。


そして、学祭当日…。

私は舞台へ上がった。