――詰めが甘かった――


「もしもし…??」
『やっと出た。』
「っ!?……ハルっ。」
受話器から聞こえてきたのは聞き間違えるはずもないハルの声だった。
動揺と混乱で一瞬言葉に詰まってしまったが咄嗟に電話を切ろうとして―――――。

『切んなよっ!!』
「ぁ…っ。」


ハルの制止の声が響き……諦めた。


この後に彼の口から告げられる別れを覚悟し息を殺してその時を待つ。
涙で視界が滲み嗚咽が漏れてしまった。

『…本当、よく泣くな…。』
「っ…うぅ、うるさいッ…。」

苦笑混じりの囁きは私の心に優しく響いてきて、私は悔しいくらいに彼を好きなんだと思い知らされた。

「ハル…、私っ…。」
『花火大会、行かないか?』
「へ…?」

サヨナラの4文字を想定していた私は目を見開いた。
黙り込んだ私を無視して彼は話を続ける。

『中央公園であってんじゃん毎年。来週の日曜、学祭の打ち上げ抜け出してさ。』
「ぁ…ぇ…えっ…。」