それは夢のような時間だった。

私の体をなぞる指先は壊れ物を扱うみたいに優しくて…キスの雨が降る。
現実か夢か区別がつかないくらいに心地が良くて脳内が麻痺しつつあった。
そんな私に彼は【痛み】を与えてくれた。

首筋から…胸元、太もも、足の指の先まで――。


鈍くて焼けるような痛みが通り過ぎるたびに、赤い印が残されていく。

それは所有の証だ。
足の爪の先から髪の毛一本たりとも二度とハル以外には触らせない。
下腹部に走る甘い疼きが躊躇無く彼を求めていた。

繋がる体は魂まで溶け合ってしまうかのような高揚感をもたらし…私の瞳からは涙が溢れ出す。

世界にたった二人しか存在しない。
そんな錯覚を覚えさせるほど私の脳はイカレテいた。
静寂が支配する中で淫らな水音が響き渡り…彼の吐息と、私の喘ぎとシンクロする。

「…っ、やだ…ぁ。頭、おかしくなるっ…。」
「いいよ…っ。もっと…俺で一杯になって…。」
「?!ッああぁ…?!」

最奥まで貫いて欲しがった。
私の細胞にハルを刻んで…。
このまま死んでも構わないと思えるほどの高揚感だった。




「……な…んかさ、不思議な感じしねぇ。」
「…うん。」

お互いの熱を感じるままに貪り合いどれくらいの時間が流れただろう。