私の好きな彼女、私を愛した彼氏

「ダメ。……電気はつけないでイイよ。そのほうが何かと好都合だからさ。」

――どういう意味?――

次々と頭に浮かぶ疑問に私は思考回路がショート寸前だった。

「…ついて来て。」
「うん…。」

――それは悪魔の囁き。
だけどそのトーンには甘く人を惑わせる色香が垣間見れる。
……ハルが…居る。
漠然と、でも確かな何かを感じた。
異世界に迷い込んでしまったのではないかと錯覚させるほどの静寂の中、私とアカネは無言のまま階段を降りていった。
そして5階の踊場当たりで足を止めると……。

彼は姿を現したのだ。

「ミウは…、分かり易いから時々困るよ。」
「…何それ。」
「四六時中そんな熱い視線送られると…正直どうしていいか解んなくなる。」
「困るって事?…私の気持ちは迷惑?」

私は体が小刻みに震えるのを気が付かれないよう必死に強がって見せた。
軽い拒絶の意図が感じられ泣きそうになる。

何で急にそんな事言うの?
突然現れて私の心を奪っていったのはハルなんだよ?
私の最後の理性を剥ぎ取ったのはハルなんだよ?


心を渦巻く負の感情を必死で飲み込み彼の返答を待った。