私の好きな彼女、私を愛した彼氏

私は静かに彼女の後に続いてエレベーターに乗り込んだ。
アカネの家は学校から徒歩15分くらいの場所にあるマンションの8階。
何というか…今は密室で2人きりになるのは避けたかったのに。

ほんの数十秒にも満たない刻が…私の心に異様なプレッシャーをかけ眩暈を感じたくらいだ。


「はい、ノート。」
「…ありがとう。それじゃ…私、帰るね。」

手短に挨拶を済ませ私はアカネと目を合わせないまま背中を向けた。
すると思いもよらない言葉が背後から聞こえ瞳を見開いた。
「お母さんっ、下までアキを送ってくる。」
「な…ぇ?…ッ」
「ほら行こう、アキ。ぁ…折角だし帰りは階段にしようよ。」

私の動揺など気にもとめず彼女はエレベーター横の階段のドアを開いた。

薄暗い…。

明かりが灯らない非常階段は私の足元を危うくさせた。
壁をつたい電気のスイッチを捜し当てた私は迷わず手を伸ばし……。