私の好きな彼女、私を愛した彼氏

私の心なのに私にはどうにも出来ない。
交差する想いが私の心を蝕み全てを墜落させていった。


――そして…。

｢…ねぇ…、アナタは誰?｣
｢へ?何か言った?アキ…。｣

ヤバい…っ。

私は自分の口から漏れた言葉に後悔した。
何故だろう…アカネが怪訝そうな顔をしているのが辛い。
まるで、…初めから何もなかったかのような無を思わせる瞳。
過ちを侵しているのは私…。
こんな浅ましい感情を抱くなんて。
軽蔑しないでっ。

｢何でもないっ!!また明日ねっ。｣

私は逃げるように彼女に背を向けた。
すると……。

｢待って!!アキっ。｣
｢な…に?｣

予想外の出来事に声が上ずってしまった。
反射的に一歩後ろに下がる右足を踏み止まらせ彼女を見つめる。
アカネは私を呼び止め3秒ほどの間を置いて呟いた。

｢昨日借りた古典のノート…返したいんだ。ちょっと付き合ってくれる?｣
｢……いい…けど。｣

そんなの別に明日でも構わないはずなのに…。
アカネは有無を言わせない無言の圧力みたいなものを感じさせ私の選択肢を奪った。