「それは遠慮させて頂きます。……にしても初体験は14歳でファーストキスが18歳かぁ。しかもそれ以降キス経験0、ねぇ。SEXは腐るほどしてるのに。」
「腐るほどって…。もっとイイ表現は無いの?」
「率直で解りやすいだろ。嘘は言ってないんだし。――で、何で?」
「…ん?何が?」
「何がって…キスを嫌がる理由だよ。俺とはしたよな。何か基準でもあるの?」
「……あるよ。」

――それは、貴方が【ハル】だから――。



あれは高校3年の7月初旬。
私とアカネは何時もと同じように2人揃って下校していた。
時刻は夜の8時前。
夏間近とはいえ空は暗闇が支配し、アカネの家に向かう路地に隣接したラブホテルはネオンを灯し客を待っていた。
そんな中を私達は雑談をしながら何気ない時間を過ごす。

「でさ、マジに笑えるんだよね。」
「へー。今度私も見てみようかなぁ。」

アカネの笑顔は自然と心を癒してくれた。
でも…。

私はそんな彼女を最悪な形で裏切り続けている。
早く出てきて…ハル。