「……ちょっと、練習してみる?」
「ぇ?」

――練習??――

私の声は黒板の上に飾ってある時計の秒針の音にかき消された。
向かいの席より立ち上がったアカネに戸惑い、瞳を反らす。
すると、アカネが私の右手を優しく掴み…自らの指を絡めてきたのだ。
私は……もう、理性が保てなくなっていた。
アカネに誘われるままに彼女の方へと向きなおり立ち上がる。

「……もし、生きる目的が必要だってんなら俺の為に生きてよ。」
「……ハ……ル?……」
「――好きだ、……ミウ。」


台本通りのセリフ……なのに、何処か……リアルで……胸が切ない。
私は何の迷いも無く彼の名前を呟いていた。
目の前にいるのは間違えなくアカネなのに……。


物語ではミウとハルが初めてのキスを交わす場面―――。

私は……静かに目を閉じた。
逃げられない事を本能的に解っていたのかもしれない。


私達は、―――禁忌を犯す。



触れ合った唇は……甘いイチゴジャムの味がした。