トランプ帝国記

涙が溢れて言葉がつまる。


手で口を覆った。


「…目に入らなかった…すまない」


「……」


何も言えなかった。


自分の無力さを他人のせいにしただけだった。


妹を死なせたのは、全部自分のせい―――。


自分が、妹を連れていかなければ…。


自分が、あのとき手を引けていたら…。


そんな思いがずっと頭を廻っていた。


男は何も言わず、リアの横に座った。


少し落ち着いて、小さく口を開け話し出す。


「…私を、ハート国に返して」


リアの言葉に男は軽くため息をついた。


「…仕返しでもして、死ぬきか」


「…スフィアのいるところで…眠りたい」


リアの気持ちを察しながらも、きついようだが現実を話す男。


「…他国の者が入国すること自体、有り得ない話だ。そう簡単に門はくぐれない」


殺伐とした両国間で許されるわけはない。


リアはそれもわかっていた。


ただ、今の状況で、生きていこうと思えるだけの理由がなかった。





それからひとしきり泣いた。


その間男は何も言わず横にいた。