でもどうせ何もできないんだから、考えるのが面倒くさくなって、あやふやにごまかして終わる。

(今日もそれで終わるんだろうな…)


れんげはゆっくり窓から離れて、本の背表紙を見ることもなくドアに向かう。


―――ストン



何か物が落ちる音がした。


振り返ると下に、一冊の本が落ちていた。


(ふれてもいないのに―――?)


不思議に思い、その茶色っぽい本にゆっくり手を伸ばし拾ってみる。

ずいぶん古い本。



―――トランプ帝国記―――



破れそうな表紙には、そう書いてあるだけで、絵などひとつもない。


(なんだ、ただの神話か。)


そう思いながら開いてページをめくってみても挿し絵などひとつもなく、ただ小さな蟻のような文字たちが行儀よく並んでいるだけだった。


(作り話なら、絵ぐらい載せてあってもいいのに。。。)


結局れんげは、それを“ただの不思議な本”ということにして、元々あっただろう位置へ戻そうとした。


空いていたのは、伝記のスペースだった。


(きっと誰かが適当にしまっただけだよね?)


当たってもいないのに落ちてきた本を少し怖く思い、れんげは足早に図書館から出た。