「いたた……」
顔面攻撃を大地に仕掛けたあたしである。
「大丈夫か?」
淨弥君はそう言ってあたしの側までやってきて、顔についてる土を手ではらってくれた。
「あはは……、久々に転んだ」
あたしは苦笑いしながら淨弥君を見る。
「転ぶなって言った側から転ぶって、全くドジなやつだな」
本当、しょうがないやつだなという顔で、淨弥君はあたしの頭を撫でながらそう言った。
「だって……」
早く、淨弥君の側に行きたかったんだよ。
どうか、目の前にある綺麗な瞳に
そんな気持ちを見透かされませんように
「……どうした?ぼーっとして」
淨弥君は不思議そうに頭を傾げる。
「えっ?!やっ、な、なんでもないっ」
慌てて下に俯く。
見とれてました、なんて、言える訳ないよ……。
「怪我、してないか?」
淨弥君はあたしの頭に手を置いたまま聞く。
「うん、大丈夫」
あたしがそうコクリと頷くと、
「立てるか?」
淨弥君は立ち上がり、あたしに手を差し延べた。
ドキドキしながら淨弥君の手に掴む。
大きな手にドキドキしながら、淨弥君にこのドキドキが伝わりませんようにって思った。
−−−−−−−………
−−−−−−………
淨弥君に手を引かれるまま、あたしたちは河岸にやってきた。
ゆっくりと地面に腰かける。
さっきから、なんの言葉も発してない。
淨弥君はあたしの手を握ったまま、月を見上げている。
そもそも、どうして、あたしをここに呼んだんだろ。



