実は、パパは会社から

「アメリカへ行け!」

というありえないことを言われ、
アメリカへ赴任することになったらしいのだ。




サラリーマン人生にNGは存在しない。

なんて少し悲しそうな顔をして見せるものの、
家のパソコンの検索履歴が、


”アメリカ 自由 最高”
”アメリカ 金髪美女 最高”


など、まるで中学2年生の男子が検索をかけてそうなワードだらけになっている。(中学2年生男子をディスっている訳ではありません)



そんな話を聞いたママは泣きながら

「嫌よあなた!私も行くわ!」

とパパにすがりつき


パパは

「ママ!パパもママと離れるのは嫌だよ!一緒に行こう!」

と涙目になりながらママの両手をにぎりしめ


ママは

「ええ!」

と答え、二人で見つめ合っていた。


……ちょい待ち。

「あたしは?」


あたしを登場させておくれ。


「椎榎はもちろん、日本でお勉強よー!」

「あぁそうだ!パパは椎榎にぴったりの高校を見つけたからな!
きっと楽しい高校生活を送れるぞ!」


ってそんなこといつ決めたんだよ!!

最初からそうするつもりなのかよ!!


「はぁー…」

明日から寮生活、っかぁ。


今の学校から転校かぁー。

みんなにお別れも言ってないのに…!!




優しさで検索履歴を消してあげたこと、ちょぴっと後悔した瞬間。




「パパとママのばぁーーかっ!!」

そんなちっぽけなあたしの声は、部屋中に虚しく鳴り響いた。