椎榎の声が震えてる。


もしかして、…苦手?
女幽霊が、苦手?



おいおい。
マジ……


――チャンスじゃねぇか。



ちょっと、驚かせようか。



「椎榎……」

「な、なに…」


椎榎は俺を見上げる。



「…後ろの方の女、今、手招きしたぜ…」


なーんてなっ。
女(中身男)なんて一人しかいねぇし。



「う、嘘っ…。あ、あたしっ、…一人しか見えないよ……!」


…んなの当たり前だ。(笑)
一人しかいねぇもん。



笑いを必死に我慢して、

「……マジ、かよ…」

芝居を続けた。




「……う…ついッ…」

……ッ…!


目を潤わせて、上目遣いで俺を見る椎榎に、ドキッとした。



「……あたしっ、…苦手……」