「はいはいどちらさんですかー、と」


玄関ドアを開けると、ヘルメットの男が1人。
男の向こうには赤い色のバイクが見えた。


「あ、郵便です、あとこっちはゆうパックです」


男はニカッと笑うと、手紙と荷物を寄越してきた。
俺は慣れた手つきで、はいはいと応えながら、一緒に渡されたボールペンでゆうパックの方に名前を書いて郵便屋の背中を見送った。


「母さん、福岡のおばちゃんから何かきてるぜー」


福岡のおばちゃんは母さんの妹にあたる人。
いい所に嫁いだみたいで、毎月何かしら送ってくれる。


「あらぁ、何が入ってるかしらねぇ」
「ナマモノじゃないのは確かだな、書いてない」


送り状の、品物欄を見ながら言う俺。
要冷蔵の印も付いてないし、お菓子かな?
なんて予想しながらリビングのテーブルに置き、そのままソファに腰掛け他の郵便物を眺めた。


10数通ある。


宛名を眺めながら一通一通、テーブルの上に並べた。
親父のバイク友達からの季節の便り、母さんの使ってる化粧品のダイレクトメール、展示会の案内などなど。
他愛のない郵便たち。


「あれ?」


俺宛てに何かが来ることは、滅多にない。
弟の悠太なら、映画好きでよく試写会の抽選に応募してるから、月に何通かはあるけど。


「これ、俺宛か?」


久しぶりに自分宛ての手紙だ。
しかも塾の案内や教材の広告ではなく、赤と黒のチェック柄の封筒で、宛名の字体は少し丸みがかった柔らかいもの。