「瑞希、風呂か?」

洗面所のドアが開くのが聞こえた。

こないで!

あたしは心の中で祈った。

バスルームのドアを開けて欲しくない。

こないで欲しい。

虹を忘れるって決めたから。

忘れて、健人とつきあうって決めたから。

あたしの願いが届かなかったのか、バスルームのドアが開いた。

「あっ…」

虹が短い声を出す。

あたしは、どうすればいいのかわからない。

この姿を隠そうとしても、あたしは指1本動かすことができない。