「気をつけてね」

当日、わざわざ見送りにきたお母さんが言った。

「うん」

「帰ってきてもいいから」

「わかった。

じゃ、行ってきます」

足元にあるキャーリーバッグとボストンバッグを持ちあげる。

微笑んで見送るお母さんに向かって、あたしは笑って手を振った。

お母さんの姿が見えなくなっても、あたしは手を振り続けていた。

駅につくと、ジーンズのポケットに入れてあった水色の封筒を出した。

須藤虹から送られてきた封筒。

中には合い鍵と地図、手紙が入っていた。

いろいろ忙しかったから、手紙の方はまだ読んでいない。

改札を通り抜け、ホームに行くと電車がきていた。