“あいつ”
は、実はどうも、あの頃ねぇちゃんが言っていたように、いつか突然出て行き、
そして、
今も、
生きて は、いるらしい…。
なぜ、出て行ったのか、
どこで、何をしているのか、
どんな見た目で、どんな奴なのか…
それは知らない。し、
聞かない…。
誰も詳しいことは言いたくないみたいだし、
僕達を置いて出て行ったのは事実らしいし、
そんな奴のことを知りたいとも思えない。
何だか分からない嫌悪感や、憎しみはあるけど…。
でも、
この身長の素…で、あろうことには感謝している。
野球部で絞られ、
あいつの血ででかくなり、
今、こうして、
チビでデブではなくなったことに、
たった今、今だけ、あいつに感謝する…。
今、今日、
こうしてあの子に逢える日に、チビでデブじゃないことに――――。


