ヒーロー先生

今まで告竜さんの料理の腕については誰ひとりとして触れていなかったがまるでその予想通りのように告竜さんの料理は俺の作る弁当の何倍も上手で可愛かった。作戦内容的には単純だったが告竜さんの腕により効果は抜群の作戦のように思えてきた。これは誰が貰っても嬉しい。
オレンジを基調としたチェックの可愛らしい弁当箱にひとつひとつ表情の違うタコさんウィンナー、綺麗な黄色の玉子焼き。ハンバーグは勿論手作りで上にはチーズがトッピングされている。アスパラのベーコン巻きと赤いミニトマトは色鮮やかさを見事演出し食欲をそそらせる。
凄く美味しそう！とはしゃぐ国立先生とそれを何時ものように眺める数成先生に告竜さんは協力のお礼だとそれぞれ２人の締めているネクタイと同じ色の弁当箱の弁当ををあげていた。国立先生には赤、数成先生には青だ。それを受け取り更にはしゃぐ国立先生に数成先生はうるせえと一言小さく呟いたのが聞こえた。

「阿藍、君」

遠慮がちに名字を呼ばれ僕の視線は発声源である告竜さんへ向く。

「阿藍君、も、もし良かったら…」

告竜さんの手にはカラフルな水玉模様の弁当箱。両手で差し出す告竜さんに僕はありがたく礼を告げて受け取った。まさか僕まで貰えるなんて思わなかった。昼食時に友人にからかわれることは決定だなあ。
告竜さんは律儀にも千理先生にも弁当を作ったらしいが、生憎あれから授業以外では会っていないらしい。数成先生曰わく千理先生は人からも貰ったものは滅多に食べないらしく、また今度にしてくれと少し申し訳なさそうに断りを入れていた。