帰り際。神崎は唐突に私の欲しかった言葉をくれた…。
「好きだからだ」
「…え?」
最初は意味が解らず、なにが?と訊ねようとすると、神崎は再び口を開いて言った…
「弟にそう言っとけ」
神崎が陸に言われた言葉
「なんで姉ちゃんと付き合ってるの?」
さっきの言葉は、その答えということなのだろう。
…神崎に好きと言われたのは、この時が初めてだった。
私は嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになった。
でも、ここで泣いたらまた神崎に馬鹿にされるから泣かないように堪えた。
神崎は陸に言っておけと私に言ったけど、私は陸には言わなかった。
この言葉は私だけのものにしたかったのだ。
不器用な神崎らしい言葉。
今回は、誰にも教えてあげない。
Fin

