ひょんなことから神崎と付き合い始めて、数ヶ月が過ぎた…。
私たちは相変わらず、お互いを名字で呼び合っている。
それなりに彼氏彼女として普通に付き合っているのに、名字で呼び合うのもなんだかおかしい気もする。
けど、私と神崎だからそれも仕方がないことなのかもしれない…。
…とは言ったものの、神崎は全体的に冷たい。
付き合う前となんら変わりのない態度なのだ。
口は悪いし、態度はでかい。
今更ながらなぜこんな男に惚れたのか、自分のことなのにさっぱり判らない…。
「神崎ってさ、素っ気ないよね」
「…は?」
「………」
「………」
…脈絡もなくそんなことを口にしてそのまま黙ってみれば、神崎も黙った。
そこは普通、なんで?とか尋るとことだろう。
そのまま黙るなんてやっぱり素っ気ない奴だ。
「…メールとか特に。いつも素っ気ないじゃん」
「……返事はちゃんと返しているだろう」
「そうだけど、"ああ"とか"わかった"とか、一言ばっかじゃん。
なんか怒ってるように思えるんだよね」
「怒ってるわけじゃない」
「そう思えるって話!
顔文字とか、絵文字とかつけないの?」
「…ごちゃごちゃしてうっとうしい。めんどくさい 」
「……そういうところが本当に素っ気ないよね」
皮肉を込めてそう言うと、神崎は不機嫌そうに眉をひそめた。
…しかし、
「…わかった。努力する」
「!?」
今日の神崎は、思いのほか優しかった…

