家までもう少しのところで、

富塚は制服のポケットに手を入れ、空を見上げる。

徹…。俺は変わったのかもな。

快晴の空が富塚を見下ろす。

でも俺が変わったとするならそれはお前のおかげ。

俺にとってお前が大切な存在だったからこそ、俺はお前の死に多くの事を感じ、そして成長した。

お前を殺した世界の運命は許せないけど、もしその世界にお前がいるんだとしたら、せめてこれからの俺を見ていてくれ。

彼は目線を前に向ける。

その目には、ひたすら前しか映っていなかった。

彼は歩み続ける…。


家の前。

一人の女性がそこに立っていた。

富塚は彼女を見て、涙が出そうになる。

富塚は涙がこぼれないように再び空を見上げた。

なんだ…。

俺は何にも失ってないじゃないか。

多くの苦労を経験してきたから、今が本当の幸せだとわかる。

富塚は彼女にかけるべき言葉を探した。

その言葉はいろいろありすぎて、一つを選ぶ事は難しい。

まあ良いさ…。

これから何度でも話せるんだ。

富塚は、俯く彼女を早く笑顔にしたかった。

「お帰り。美里。」