側にいる誰かへ

俺は雅樹の質問に首をひねる。

「何?知らないのか?」

「ああ。何の事やら。」

雅樹は部屋の奥に行き、スポーツ紙を一枚持ってくる。

その一面に大きく写る顔。

その顔は確かにコンビニで俺が殴った犯人の顔だった。

その記事のみだしは、

「高校生、強盗犯を一発KO。」

俺は不思議そうに雅樹の顔をみた。

雅樹は口を真一文字に結んでいる。

「まさかお前が良い事をして、新聞に載るなんてな。びっくりだ。」

「俺もびっくりだぜ。」

俺達は思わず吹き出してしまう。

二人はしばらく顔を見合わせて笑っていた。

俺は雅樹に言う。

「はは…。何か、謝りにきたのがアホらしくなってきた。」

「謝る?何を?」

「ほらお前との喧嘩の事。いちおう加害者なわけだし。」

雅樹は、俺の言葉を鼻で笑う。

「加害者?止してくれ。俺達は不良だぜ。いつでも喧嘩上等だろ?」

「……。まあな。」

雅樹の態度は、気を使おうとする俺とは違い、実に自然だった。

その態度が、俺を想ってしている事なのか、彼の素のものかはわからない。

でも、俺にとって雅樹との久しぶりの会話は、楽しかった日常を思い出させてくれた。

俺は、やっぱりこいつと親友でいたい…。

気づけば、俺にとっての楽しい時間はあっという間に過ぎ、時刻は23時をまわっていた。

「そろそろ帰るわ。」

俺はゆっくりその場を立ちあがる。

「ああ…。またな。」

俺は玄関のドアノブに手をかける。

瞬間、胸に寂しさが込み上げてきた。

俺は雅樹の方を振り返る。

「今日、泊まっていいか。」
雅樹はまた、俺の言葉を鼻で笑う。

「たりめぇだろ。」

その言葉は、俺の胸を暖かくする。

「ありがとう。」

「え?」

雅樹が俺にわざとらしく聞き返す。

「なんでもねぇよ。」

不良の俺は世間では、これからも疎まれるだろう。

でも俺は、それでもこいつともうしばらくバカをしてたいと思った。