葬儀が終わった後も俺は2日間徹の家にいた。

一人になった徹の母をなぐさめるために。

徹の事以外考えられない自分。

今の俺には、徹以外のものはどうでも良かった。

徹との学校生活。
徹と旅行に行った事。

彼女は俺が話す徹の思い出話をただ笑顔で聞いていた。

その笑顔が俺の唯一の救い。

きっと徹も彼女の笑顔を望んでいるはずだから。

学校なんてどうでも良かった。

徹が死んだのに授業なんて受けたくなかったし、

徹がいないあんな場所に行きたくもなかった。



一つだけ気掛かりなのは雅樹の事。

雅樹…。

俺達三人はいつまでも親友だろ。

通夜と葬儀の時、雅樹の顔を見かけた。

声をかけてきた雅樹に俺は「徹の母をなぐさめる事。この家にしばらくいる事。」を伝えた。


雅樹は俺の話を聞いていたが、しばらくすると俺のもとを離れていった。

雅樹は何も言わなかったが、その時の顔には、明かに不満の色が表れていた。

雅樹…。

お前は俺と同じ考えだろ?

俺は俺の中の雅樹に問いかける。

あれ以来、雅樹とは連絡をとっていない。

この家にも来ていない。

今は雅樹の気持ちがわからなかった。

徹のためにできる事を全部するのが親友じゃないのか?

俺は自分の行動に疑問を抱き始めていた。

俺はしばらく考えていたが、ふいに徹の母が話しかけてきた。


「富塚君。」

「はい。」

「明日は学校に行ってね。君が自分の人生を棒にふったら私、あの子に申し訳がたたないから…。」

「でも俺は学校なんて…」

「わかってる。でもお願い。私は大丈夫だから。私も頼るだけじゃ駄目だから。働く事を考えないと。」

彼女の突き放す言葉に俺は少し寂しさを感じる。

自分を否定されているような。

頼ってほしいような。

俺は彼女の言葉に答える。

「大丈夫。明日は必ず行くよ。」

俺は彼女のために無理に笑顔を作る。

俺はまだ気づいていない。

富塚は彼女の唯一の理解者。

彼女は富塚の唯一の理解者。

お互いの寂しい心は二人をどうしようもなく引き付けていた事を。