何故だろう…。

徹の通夜と葬儀の最中。
俺の心には憎しみしか無かった。

徹を供養しなければいけない時なのに。

徹の事を想わなければならない時なのに。

不良の世界で言えば、俺は今「ガン」を飛ばしていた。

「神」と言う名の存在に。

運命を神が決めたものだとしたら、

徹の運命が信じられなかった。

徹は俺よりも遥かに人望の厚い人物。

友人が困った時、悩んだ時は一番にそいつのために行動する奴。

俺は何度あいつの存在に救われ、助けられてきただろう。

俺だけじゃない。
たくさんの奴がそう思っているはずだ。

いつも笑顔で俺達の心配ばかりしていたあいつ。

「神や仏」

この世界の頂点に祭り上げられているもの。

お前らが本当にこの世界に存在するなら、なぜあえてあいつを?

なぜ徹を選んだ。

世界で死すべき人の人数が決まっているとしたら、

他に死ぬべき奴はいくらでもいただろ…。

だいいち…、

なぜあいつが死んで俺が生きている?

少なくても俺の命はあいつのものより軽い。

人望も薄いし。

優しさすらない。

世界よ。

あんたは間違っている。

絶対に…。

絶対に…。

だったら、
神も仏もまやかしだ。

まやかしに祈って何の意味がある?

形だけの葬儀。
形だけのお経。

いったい何の意味がある

ないはずだ。

意味のない事などする必要はない。

こんな葬式ぶち壊してしまいたい。

火葬が終わる。

灰になった徹の骨にもう以前の徹の面影はない。

俺は冷たい目でその骨を眺め、拳を強く握りしめる。

俺は今にもブチ切れそうな自分を必死におさえていた。

そんな俺の衝動を押さえていたものは、徹の母の姿だった。

涙を流しながらも、来てくれた人達に頭を下げつづける彼女。

彼女は徹のために行動している…。

本当に徹だけの事を想って。

そんな彼女が準備したこの場所を俺が壊せるわけがない。

もし、ここが舞台だとしたら、

舞台上には徹と彼女。

俺の出る幕ではない。