俺は学校を休み、家に帰らず、しばらく徹の側にいる事にした。

俺は俺のできる全てを徹にしてあげたかった。

それが親友の役目だと思ったから。

形だけではない本当の親友として…。

それに、徹が今この状況を見ているとしたら、きっと母親の事を一番心配しているはずだ。

俺は彼女に何もしてあげられないけど、せめて徹を想う同じ気持ちを持つ者として側にいてあげたい。

俺の徹を想う気持ちは絶対嘘じゃないし、そんな自分だからこそ今の彼女の側にいられると思うから。

もし、俺が彼女なら偽りの優しさはいらない。

同じ気持ちを持つ者に側にいてほしいはずだから…。


徹の家には何人もの人がお参りに訪れた。

客が来るたび、立ち上がろうとする彼女を俺は何度も制止する。

彼女にはできるだけ徹の側にいてほしかった。

例え、徹の遺体が魂の抜け殻だとしても…。

それしか俺にはできなかったから…。



玄関から出迎える俺に客は皆驚いたような表情をした。

金髪にピアスの俺。
それも仕方ないか。

俺は近くのスーパーに行って髪染めを買う。

五年ぶりに髪を黒くし、ピアスも外す。

俺は、徹のために客を出迎え続けた。

俺はある事に気がつく。

普通、家の者が死んだ時は、身内や親戚が通夜や葬儀に備えての手伝いに来るものだ。

だが、徹の家に彼らの姿はない。

徹の母は語らないが、きっと様々な苦労の末、今の暮らしにたどり着いたのだろう。

何人かの例外を除き、徹のお参りに来る人は、スナックの女性等の夜の仕事をしている人ばかり。

そこからも、徹と母親の今までの苦労が容易に想像できた。

富塚は思った。

俺はよく考えたら徹の家の事を何も知らなかった。

もし、徹が生前、自分の家の事で悩んでいたとしたら俺は彼から相談される事もなかった。

俺だけが一方的に相談して…。

俺は本当に彼の親友だったのであろうか。

俺が勝手に思っていただけでは?

俺の想いばかり徹にぶつけて…。


本当に恥ずかしくて
ダサイ奴。

俺は何て子供だったんだろう…。

徹。
会ってお前に謝りたい。

俺はお前の良い親友でいられたのだろうか…。