「みく~♪」

名前を呼ばれて振り返る。
みく、っていうのは私の名前。


小牧 未来(こまき みく)

「未来」と書いて、「みく」って読む。


右ななめ後ろの席から手を振っているのは
親友の梨沙。

片平 梨沙(からひら りさ)

梨沙とは小学生からの親友で、
成績がよく、スポーツもできて優しく
しっかりとしていて明るくって…
私とは正反対の女の子。
よく梨沙と一緒にいると
「娘とお母さんみたい」だなんて言われてた。


「みく、音楽祭のパートどうするの?
 私はソプラノにしようと思ってるんだけど…」

なぜか片手をあげている梨沙に、私は首をかたむける。
ふと周りを見てみると
同じように手をあげている女の子が数人。
ソプラノかアルトか、どっちにするか決めているみたいだった。

いつも、ぼ~っとしてしまう私。
授業中でも家でもぼんやりすることが多い。
その時も私は、
窓の外に浮かんでいる雲を眺めながら
「あの雲、食べれそうだなあ」
…なんて考えてた。
そうやって、学級委員長の説明を聞き流していたみたい。


「あ…じゃあ、私もソプラノっ」

慌てて手をあげた私は、ぎりぎりソプラノのパートに仲間入り。
梨沙と同じ班になることができた。

私の慌てぶりに、クラスのみんなが笑う。
目立つことが嫌いな私だから
何だか恥ずかしくなってしまう。

「一緒だね。がんばろっ」

くすくす笑っていた梨沙に笑顔でそう言われて、
私も笑顔で「うん」と返した。