「ゼロに決まってんじゃん。那湖以外のチョコはいらねぇんだから」


那湖からもらえないのは分かってるけど。


そんなとき…ふて腐れ気味の俺を包む、甘い香りがふわっとした。


「那湖!?」


いつの間にか近くにいた那湖。

那湖に優しく抱きしめられた俺は、無駄にドキドキしてた。


だって那湖は普段、自分からこんなことしないし。


「あたしね不安だった。芯は毎年たくさんチョコもらうじゃん?本当はあたしのなんか…いらないんじゃないかなって」


消えそうなぐらい小さな声。

少し震えてる…?


「そんなわけないだろ」


俺が知らない間に那湖を傷付けてた?

不安にさせてた?


「うん。だから今、芯の言葉が聞けてすごくうれしい」


俺もうれしい。

那湖も俺のこと、ちゃんと好きでいてくれてんだな。

心にじんと何かが溶けた。