高岡と結花の関係は
22才の冬まで
変わりなく続いた。

16才からの6年の間には、
一日も会わない日などなかったが
例外だったのは
高岡も結花も
それぞれ別々の三年間の高校生活の間に
修学旅行があった時くらいだ。

そのまま結婚するものだと
二人とも信じていたし

二人を知る友人も
二人の未来を疑う者は
誰一人いなかった。


高卒で就職した二人は

それぞれの同僚と
付き合いが生じる様になり

結花の目からは
高岡が幼く見え、

高岡の目からも
大人ぶった結花を
遠い存在の様に
感じてきたのは
隠せぬ事実だった。


自分の目を、
自分の心を信じて、
高岡は結花を理想の女性だと信じていた。

どんなに些細な
結花の弱さも

憎めなかったし

結花と離れて生きていく選択を

自らするなんて
一度たりとも想像した事は
なかったのだ。


別れを切り出したのは
結花の方からだった。

今までに見た事のない

高岡を恨む様な目。

高岡が何をしたわけでもない。
きっと、幼い高岡に
しびれを切らしたのだ。

結花の見る世界が
変わってしまった。

高岡は
そう思うしかなかった。


最後に結花と言葉を交わした冬の夜。

高岡の車の中で
当たり前の助手席で
結花は泣いていた。

不安が言葉にできず
ただ泣いている様だった。
結花を抱き締めた。

心が戻る様に。

結花の住む世界が変わっても。

結花の心が
戻る様に。




28才。
配送中の車で
高岡は事故を起こし、
入院するはめになった。


結花と離れてから
ろくな事がない。

高岡自身、
自分を責めて生きていた。

違うどこかで、
もう会う事のない結花を
ずっと責めながら
生きていた。