ある夕方。

高岡は会社を早めに退社し
コンビニで暖かい缶コーヒーと肉まんを一つ買った。
そのまま
自宅近所の公園に寄った。

「よっこらしょ」

ベンチに腰をおろす。

いちいち、体が重たい。

買ってきた物を
ビニール袋から取出し、

ひとくち、
ふたくち、
ふう~、とため息混じりに
口へ運ぶ。

楽しそうに嬉しそうに
手をつないで公園を後にしていく親子を眺め、

コートの内ポケットから
タバコを取り出す。


ふう~。

煙を吐き出す。

口元がゆがむ。


遊んでいた親子を目だけで見送ると
ベンチから腰を上げ
コートに付いた
少しばかりのほこりを手で払う。

なんとも豊かな気持ちで両手をグンとあげ
力一杯背伸びしてみた。

その姿勢のまま空を仰ぐ。
手の先に広がったのは
夕焼けに染まる
高い高い茜色の空。

もう間もなく日が沈んでしまうだろうけど。

私は生きているんだなぁ。

改めて実感する。

小さな喜びを

大きな幸福、と受けとめ

きっとこれからも生きて行くんだろうなぁ。

初秋の風は少し冷たく感じられたが、
高岡は幸せをありがたく、
深々と感じていた。


そして高岡は
気が遠くなるのを感じた。

ふわふわ。

ゆらゆら。


高岡は、
久々に結花を思い出した。

結花…

結花…

会いたいな…


52歳の誕生日を迎える
数日前の夕暮れ、

高岡は誰もいなくなった公園で
静かに倒れ
永遠の眠りについた。


結花と出会った頃、
よく公園で遊んだ。

寒いからと
ただ追い掛けっこをして

寒いからと
ただ抱き合って

肉まんを半分にして食べた。

親父のおでんも
何回も食べたな。


結花…
ごめんな。

あの時も


結花に会いたかったんだけどな…



おわり。