わたしの、センセ

真央が落ちてくる髪を、耳にかけた

「私、悠真が好きな気持ちは変わってない!」

叫ぶように、真央が大きな声をあげた

僕だって、真央を好きな気持ちは変わってない

家族のような愛情が、真央にはあるんだ

だけど、それは『恋』や『愛』とは程遠い感情になってる

「僕だって、真央が好きだよ。恋愛とは違う…家族みたいな情があるだけなんだ」

「家族」

真央が僕の言葉を繰り返した

僕は前に足を出すと、ベッドに腰を下ろした

膝の上に肘を乗せると、前かがみになって額に手をあてた

「じゃあ…なんで抱いたの?」

「え?」

僕は顔をあげた

「私が家を飛び出して、ここに来た日…悠真は私を抱いてくれた。だから私、悠真が許してくれたんだと思った。変わらず付き合いを続けてくれるんだと思ったのに…でも悠真はあの日から、私とは別々に寝てる。悠真から触れてくれることはなくて。私は悠真に抱かれたい…愛されたいの」

僕は真央から顔をそむけた

あれは…真央を想って抱いたわけじゃなかった

行き場のないさくらへの気持ちを、吐き出したくて…真央を抱いてしまった

後悔してるんだ

さくらを想い、真央を抱いた自分自身が情けなくて、あれ以来、絶対に同じ過ちはしないと心に誓ったんだ

真央とさくらは違う

僕が愛したのはさくら

真央は、好きだけど、僕の求めている女性では…もうないんだ