わたしの、センセ

僕はベッドから降りると、真央の横に立った

流しに、真央の血が見えた

真央の血なんて……久しぶりに見た

『もうっ、松浦君…痛いって言ったのに! シーツが汚れちゃったじゃない』

泣きながら僕の胸を叩いていた過去の真央が、脳裏に蘇った

初めて真央とエッチしたときに、真央の血を初めて目にした

お互いに初めて同士で、エッチに成功した時はすごく興奮したのを覚えている

でも興奮してたのは僕だけで、真央はずっと痛がってたんだよね

懐かしいな

「真央、大丈夫?」

僕は真央の手首を掴んで、口の中にある指を外に引き出した

ぱっくりと皮膚が裂けている

そこからドクドクと心臓のリズムに合わせて、血が溢れだしてきた

「真央、心臓より上にあげておいて。消毒液とバンドエイドを持ってくるから」

「ほんとに平気だから」

食器棚の下にある引き出しにしまってあるバンドエイドを取りに行こうとする僕の腕を、真央がそっと掴んだ

「でも…」

僕が顔をあげると、真央の目から液体が零れ落ちた

真央がぎゅっとシャツを掴むと、僕の胸にコツンと額をつけた

「ごめんなさい。浮気なんてするつもりなんか…なかったの。悠真を愛してるのに、どしてあんなことしちゃったのか……わかんないの。今も、悠真を愛してる。ごめんなさい、悠真…ごめん」

僕にしがみ付いてきた真央が、声をあげて泣きだした

嗚咽とともに、何度も謝ってくる真央の気持ちが痛いくらいに、伝わってくる

僕にしてしまった裏切り行為を、真央は悔いてる

酷く後悔して、苦しんでる

僕は、そっと真央の肩に手を乗せると、ポンポンと二回、優しく叩いた

「怒ってないよ」

怒ってないけど、真央への恋心はもう戻らないよ

僕は、もう真央を昔にみたいに愛せない

真央以上に愛する人を、僕は見つけてしまったから

ごめん、真央

僕たちは、もう恋人同士には戻れないんだよ