わたしの、センセ

-さくらside-

センセ、3日以内に婚約破棄にできるのかな?

夕食を食べているわたしは、「はあ」とため息をついていると、パパの元に一本の電話がかかってきた

執事が、家の電話の子機をパパに渡すと、パパは不機嫌そうな顔をして電話を耳にあてた

ママとあたしは、パパの顔を見つめた

「私だが?」

パパの低い声が、部屋に広がった

『遅くに済まないな。小山内だか』

電話の子機から、パパより随分と若そうな男の人の声が漏れてくる

パパが大きく目を開けると、喉を鳴らして、見られているわけでもないのに、きちんと背筋を伸ばして座りなおした

え? パパより若そうだけど、電話の人…偉いのかな?

「いえいえ、平気です」

パパがぺこっと頭をさげた

『君の娘は戸倉道隆と婚約しているそうだな?』

「え?」

『違うのか?』

「あ…いえ、あの」

パパの言葉があやふやになる

こんなパパって見たことが無いよ

それに婚約の話しをしてる……もしかして、電話の相手ってセンセのお友達?

夜、仕事が終わってから会いに行くって約束をしてた人なのかな?

『はっきりと答えろ』

「はい、婚約してます」

『そうか。では今回の取引の件はなかったことにしよう』

「え?」

パパの眼球が落ちてしまいそうなくらい、大きく目が開いた

席を立ったパパは、首を左右に振ると、真っ青な顔になる

「ちょ、ちょっと待ってください。娘の婚約と今回の取引と…何の関係が…」

『ない……が、個人的に戸倉が好きじゃない。それだけだ』

「は…はあ」

『わかったなら、取引は中止にする』