わたしの、センセ

「…なあんちゃって」

僕は顔をあげると、クリアファイルを持つと廊下に出た

僕がこんなことで、諦めると思って欲しくないね

テニスで鍛えたのは身体の筋肉だけじゃないんだよ

僕はさくらたちのルートとは違う廊下と階段を使って、2年生の下駄箱に先回りした

さくらの下駄箱の前に、立った

「き…貴様っ」

僕より遅く下駄箱に到着したさくらのお父さんが、驚いた顔をして僕の顔を指でさした

「まだ話が終わってないんですけどね」

僕の言葉に、お父さんの後ろにいたさくらが嬉しそうな顔をした

「生徒が救難信号を出しているのに、無視できません。助けを求めているんですよ? 婚約者と会うのは嫌だって。親なら、教師である僕よりももっと真摯に受け止めるべきだ。娘の嫌がることをすすめるのはおかしい」

「君には関係ない」

「関係ある。僕は葉月さんの担任ですから。親よりも長く彼女と一緒にいる時間が長いんですよ。教師っていうのは。嫌い…なんですよ、僕。子を思わない親って。大嫌いです」

「君に好きだと告白されたくもない」

「確かに」

僕は腕を組むと、鼻で笑う

「男に告白されてもねえ。鳥肌が立つだけですね」

僕は続けて口を開くと、さくらのお父さんに冷たく微笑んだ

「婚約の話を白紙してください」

「断る。君に指図を受ける覚えはない」

「…ですよねえ。僕もそう思います。3日以内に、僕の指図を受けたくなるようにさせてみましょう」

僕はにっこりと笑った

「…てことで、葉月さん、指導室に戻って相談に続きをしましょうか」

僕はさくらのお父さんから、葉月さんを奪うと、廊下を歩き出した