わたしの、センセ

-悠真side-

「だから何だ?」

さくらのお父さんが、くだらないと言わんばかりにほくそ笑んだ

通じないか

ま、そんな簡単に改心する相手だとは思えないし

「わからないなら、わからないでいいです。とりあえず、今はこの部屋から出て行ってもらえれば」

僕は生徒指導室のドアを開けると、「どうぞ」と手を出した

さくらのお父さんは、室内から出ていく気が全くないらしい

微動だにせずに、腕を組んで立っていた

僕は諦めてドアを閉めると、さくらの向かい側にある椅子に座った

「回りくどい言い方をしても、わかってもらえないと思うので…はっきり言いますね。葉月さん、婚約者が嫌いだそうです。今日もお父さんに勝手にデートをセッティングされて嫌だと言ってました。テストの結果が悪ければ、担任に呼び出されて帰りが遅くなる…そう考えて、白紙の答案を提出したと話してくれました」

「あ?」

さくらのお父さんの眉がピクっと動く

「お父さん、葉月さんに無理させてるんじゃないですか? 彼女が、話し下手であることはわかっていますか? 自分の気持ちを言葉にするのが苦手だって、理解してあげていますか? 彼女が何も言わないからって、それがすなわち承諾の意と解してませんか?」

さくらのお父さんがバンとテーブルを叩くと、僕を上から見下ろしてきた

椅子に座っている僕は、ゆっくりとお父さんの目を見つめた

「少し前まで学生だったお前になにがわかる」

「葉月さんの全てを理解しているとは思ってません。お父さんのほうが詳しいことはわかってますよ。ただ僕は、つい最近まで学生でした。だからこそわかる学生の気持ちっていうのもありんじゃないですか?」

「ふん…ガキが」

「餓鬼ですよ。それが何か?」

「ああ言えば、こう言う…むかつくクソ餓鬼だ」

「褒め言葉として、受け取っておきます」

僕は微笑むと、席を立って今度は僕がお父さんを見下ろした