わたしの、センセ

数秒前まで、抱き合っていたとは思わえないほど、センセは落ち着いていて、すっかり教師の顔に戻っている

わたしも、心臓の音を落ち着かせると、背筋を伸ばして答案用紙をじっと見つめた

ガラっと勢いよくドアが開くと、「まつうらぁ」とパパの低い怒鳴り声が、指導室に響いた

センセがテーブルの横に立ったまま、視線をドアのほうに向ける

わたしも、振り返ってパパの顔を見た

青筋がたっているパパの表情はまるで、鬼の仮面をかぶっているかのようだった

「貴様、何を考えてる!」

パパがずんずんと室内に入ると、センセの首を掴んだ

センセが爽やかな笑みで、パパの顔を見ていた

「生徒のことを考えてます」

センセが、あっさりと答える

パパがその答えに満足せずに、目がつり上がった

「無礼にも程がある」

「それは、僕ではなくて……葉月さんのお父さんだと思いますよ。僕は今、生徒と話をしているんけどね」

パパの視線がわたしに向く

「さくらっ! こんなところで何をしている。今日は……」

わたしはパパの言葉と手をあげる仕草に、身を縮めた

叩かれる

わたしは頬に痛みが走るのを待っていると、なかなか落ちてこないパパの掌に目をゆっくりと開けた

パパの振りあげた腕は、先生に掴まれていて、ぷるぷると震えていた