わたしの、センセ

「さくら、泣かないで」

センセの指がわたしの涙を受け止めてくれる

「だって、ごめんなさい。わたし、そんなつもりじゃ…パパに道隆さんと会うのが嫌だってわかってもらいたくて」

センセが、わたしの頭を胸に押し付けるとポンポンと背中を撫でてくれた

「平気だから。さくらの本心がわかってるなら、他の誰かに何を言われても怖くない」

センセ、どうしてそんなに優しいんですか?

わたし、今までにセンセみたいに優しい人に会ったことがありません

だから、少し怖くなる

本心は違うところにあるんじゃないかって

面倒くさい生徒って思われてるんじゃないかって…

わたしは先生の腰に手を回すと、さらに涙があふれた

「ごめんなさい」

「さくらこそ。平気なの? 白紙で出したなんて知られたら、お父さんに怒られるんだよ?」

「もう…慣れてるよ。パパに怒られるなんて」

パパが怒ってない姿を見たことがない…と思うくらい、パパは何かしら怒ってる

どうしてそこまで怒れるのだろうって、逆に尊敬しちゃうな

「白紙の理由は、家で嫌なことがあって、むしゃくしゃした…ていう理由のいいのかな?」

わたしはセンセの胸の中で、コクンと頷いた

センセがわたしから離れると、椅子を元の位置に戻した

「今度はこっちに座って。婚約者とのデートを妨害したって、きっと怒鳴りこみにくる時間だよ」

センセが、わたしに椅子に座るように目で訴えてくる

わたしはテーブルから降りて、椅子に座ると、廊下の奥からパパの怒鳴り声が聞こえてくる

すごいっ…センセってパパの行動を読んでるよ

センセは涼しい顔をして、テーブルに並んでいる白紙の答案用紙をまっすぐに整えていた