わたしの、センセ

「あ…メールにしなくて平気?」

僕は、さくらの顔を見た

さくらがにっこりと笑って頷く

「センセの声が聞きたいです」

さくらの言葉に、僕は嬉しくて顔が緩みそうになった

いけない…今は、答案用紙の白紙について聞かなくちゃなのに

僕は軽く頭を振ると、答案用紙をクリアファイルから出して、テーブルに並べていった

「呼び出して欲しかった理由は?」

「婚約者とデートしたくないんです。だから、センセに呼び出してもらって、デートを潰してもらおうと思って」

さくらが言い終わると同時に、校舎の向こうが低音のマフラー音が聞こえてきた

あからさまに改造したって感じの音だ

普通に買った車じゃあ、こんなはた迷惑な音はしない

僕は席を立つと、窓に近づいて外を眺めた

青いスポーツカーが、2年生の下駄箱前に荒々しく停まると、一人の男が降りてきた

「さくらの婚約者って、青い車に乗ってる?」

僕の質問に、さくらが「はい」と返事をした

じゃあ、あれが婚約者かな?

随分と派手な行為が好きな男だな…と僕は思った

車から降りた男は、携帯を耳にあてる

次の瞬間、さくらが「ひゃあ」と言いながら、制服のポケットから携帯を出した

さくらの携帯が、震えている

僕は窓から離れると、さくらの携帯を手に取った

「センセ?」

「生徒指導中に電話はいけないよ、葉月さん」

僕は意味ありげな笑みで、さくらを見た

「もしもし?」

僕はさくらから没収した携帯に出る

『誰?』

低く、不機嫌な声が電話の向こうから聞こえてきた

これがさくらの婚約者の声か

なんだか、偉そうだな