わたしの、センセ

センセ、無理してませんか?

聞きたくても聞けないね

わたしは、下を向くとぎゅっと制服のスカートを掴んだ

「はい、全員出席、と」

センセは、一人ひとりの名前を呼ばずに、パタンと出席簿を閉じた

え? 名前は呼ばないの?

わたしは顔をあげると、出席をとらないセンセにクラスメートたちが突っ込みを入れていた

「全員、席に座ってんのに…いちいち名前を呼ぶ必要はないでしょ」

センセが笑いながら、出席簿で肩をトントンとマッサージし始めた

「あ…中間が近くなってきたから、そろそろ真面目に勉強を始めろよ~」

センセはくるっと身体を回転させると、スタスタと教室を出て行った

センセの朝礼ってすごく簡素だ

終礼も同じようだけど…用件だけをさらっと言って、終わりにしちゃうの

去年の先生は、グダグダと何かしら長くて、聞いているほうが疲れちゃうような人だった

いつも胃の下あたりを押さえてて、可哀想なくらい青白い顔をしてた

センセは全然違うね

生徒の心を掴んで、人気を得ている

きっとセンセを好きだって思っている人は多いんだろうなあ

わたしだけじゃない

多くの人の心を惹きつけ、惚れさせてる

わたしは、センセにとったら40人近くいるクラスのたった一人にしか過ぎないんだね

わたしにとったら、センセは一人なのに

わたしはその他大勢の中の一人

悲しいけど、それが現実だね