わたしの、センセ

家に戻って、携帯を見ると不在着信が１０件以上もあった

どれも真央からだ

僕は、喉を鳴らすと、携帯に耳をあてた

２回目のコールで、真央がでる

『悠真、聞いて。あのね…』

「…わかってるよ。寂しかったんだろ。僕たちは、離れ過ぎてたのかもしれないね」

僕の声は、鼻が詰まっていておかしな声になっていた

明らかにさっきまで泣いていたのが丸わかりだ

泣きながら、バイクで帰ってきた…なんて知られたくないのに、これじゃ、隠しきれてない

『悠真…あの人には奥さんがいるの。お互いに寂しさを埋めるだけの相手っていうか…だから…その…』

言葉を選ぶように、真央が話しているのがわかる

僕は誰も見ていないのに、首を左右に振った

「別れよう…真央」

『悠真っ！　お願い、別れたくないの』

「このままじゃ、駄目だよ。僕たちはきっとまた失敗するよ。真央は地元を出ないんだろ？　僕はここで仕事をしていて、地元に戻る気はないんだ。また寂しい想いをして、過ちを繰り返してしまう」

真央だけじゃない

僕だって、真央と同じように寂しさから過ちを犯す可能性だってあるんだよ

僕の脳裏には、葉月さんの悲しげな顔が浮かんだ

「ごめん。真央…別れよう」

僕は耳から携帯を離すと、電話を切った

ごめん、真央

僕は、真央とやり直せる勇気がないよ

気持ちが、離れていってるんだ、確実に真央への気持ちが薄れていっている

嫌いじゃないよ

真央が好きだよ

でも愛してるとは言えないんだ

ごめんな、真央

好きだったよ、真央のこと

僕を支えてくれた真央を好きだった

好きだけど、今、僕の胸の中にいて、心と体を熱くしてくれるのは真央じゃないんだ