わたしの、センセ

-悠真side-

葉月さんに、学校からの手紙を渡すと僕は一度、学校に戻った

さっさと仕事を片付けると、アパートに帰り、私服に着替えた

ゆっくりと身体を休める暇もなく、僕はバイクに跨ると、赤いヘルメットを持って地元に向けて走り出した

『僕は、誰に何と言われようとも、僕自身の考えを曲げない。僕は僕自身に嘘をついて生きていくのが嫌いなんでね』

葉月さんの父親に言った言葉を思い出すと、自嘲の笑みをヘルメットの中で作った

どこが、嘘をついて生きていくの嫌い…なんだよ

嘘ばっかついてたのに…

両親が死んだときは、寂しくて毎晩のように泣いてたのに…翌朝には、寂しくないと明るい声で口にしていた

立て続けに怪我をして、テニスを辞めたときだって…「もうテニスに飽きてたし」とか言って、悔しくて暴れたくなる気持ちに蓋をした

僕はいつも、気持ちとは反対の行動をとる

それが僕だ

本心に背を向けて、目をそらしていれば、辛い気持が少しほぐれた気がするんだ

真央に会いたい

今、すごく真央に会いたいよ

こんな心が引きちぎれそうな夜は、真央に包まれたい

寝不足になってもいいから、真央に会って顔が見たい

真央の笑い声を聞きたい

真央に触れたい

何の連絡もせずに会いに行く僕に、真央はどんな顔をするだろうか

喜んでくれるだろうか

いつもみたいに、笑ってくれるだろうか