わたしの、センセ

「何もできないヒヨっこが。デカい口を叩くな」

パパの拳を受け止めたセンセがにやっと笑った

「僕が何もできないかどうかは……貴方が判断することじゃない。僕は、誰に何と言われようとも、僕自身の考えを曲げない。僕は僕自身に嘘をついて生きていくのが嫌いなんでね」

センセの勝気な瞳に、パパの顔色が少し変わった

今までの教師は、パパの言葉を素直に聞き、頭を下げてた

その姿を見て、パパはすごく嬉しそうな顔をして優越感に浸ってた

だけど、パパの言葉には、センセは屈しない

むしろ犯行の眼差しを送っている

パパに歯向かう人をわたしは初めて見た

この強さに、わたしはきっと惹かれたんだ

パパの強制的な言葉に逆らえないわたしだから、自分の意志を貫く強い心を持ったセンセに憧れた

憧れが、恋に変化するのはあっという間だった

「親なら、娘の体調管理をしっかり見てあげるのが普通じゃありませんか? 一人家に残して、両親とも海外に行くなんて有り得ない。親として最低限、欠席の連絡ぐらいは入れて欲しいですよね。そんなことも出来ない親に、いろいろと学校の文句を言われても、痛くも痒くもありませんよ、僕はね」

パパの全身から力が抜けると、センセも掴んでいるパパの腕を解放した

「くそガキが」

「よく言われます」

センセがにっこりと笑った

センセ、格好良すぎです

余計、諦められなくなる

どんどんと好きなっちゃう

『好き』という感情の終点はどこにあるんだろう

早く辿りついてしまいたい

このままじゃ、わたし……