わたしの、センセ

体温計で、わたしの体温を確認したわけじゃないのに、センセは一目でわたしに熱があるってわかってくれた

それが無性に嬉しかった

顔色を見ただけで、わたしの体調の変化に気づいてくれる

ちょっとしたことなのに、すごく心を癒してくれる

やっぱりわたしは、センセが好きなのだと確信してしまう

嫌いになれたら、どんなに楽になるのだろうか

好きになってもらえないとわかってる相手を好きで居続けてしまう己が、すごく悔しく感じてしまう

「新米教師には関係ないだろ。君は、教師の仕事を全うしてろ」

パパが冷たくセンセに言い放つと、パパがまたわたしの腕を掴んできた

「ほら、さっさと着替えなさい」

嫌だっ……絶対に着替えない

わたしはまたベッドボードにしがみついた

カツカツと足音が聞こえると、今度はパパのうめき声が聞こえた

わたしはゆっくりと目を開けると、センセがパパの腕を掴んで捩じり上げていた

「僕は教師の仕事を全うしてます。生徒が嫌がっているのを目の前にして、帰るなんてできませんから。たとえそれが、父親の行為であっても」

パパの目がカッと見開くと、センセに殴りかかった

やめてっ!

センセはひょいっと、パパの拳を身軽に避けた

センセ、すごい

なかなか拳があたらないパパの顔がどんどんと険しくなっていく

センセは、顔に飛んでくるパパの手を涼しい顔で避けていった

「何も知らないくせに」

「ええ。知らないですよ。ですが、どう見ても、葉月さんには両親の愛が不足してる。両親が両方とも健在しているのに、葉月さんは凄く寂しそうな顔をしてます」

センセ……わたしは、今更親の愛情なんて欲しくないです

わたしが欲しいのは、センセの愛だけ