わたしの、センセ

-さくらside-

「7度3分か…だいぶ、下がったな」

体温計の数字を見て、パパがほっとため息を吐き出した

一時は40度の熱を出して、意識が朦朧とした

すぐにでも、道隆さんに会わせたいと思っているパパは、何度も何度もわたしの部屋にきては、体温を測っては、苛々してた

「これくらいの熱なら、平気だろ。すぐに出かける支度をしなさい」

パパがわたしの肩をポンポンと叩いた

嫌よ

出かけたくない

道隆さんには会いたくない

わたしは俯くと、布団をぎゅっと掴んだ

道隆さんに会うということは…この前以上の触れ合いをするんでしょ?

絶対に嫌だ

センセ以外の人に、触れられるなんて気持ち悪くて、嫌よ

センセはきっともうわたしに触れてはくれないだろうけど…でも、だからって道隆さんのところには行きたいとは思わない

どんなに無理だってわかってても、やっぱりセンセがいい

センセじゃなくちゃ、嫌だよ

「さくら、さっさとベッドから出なさいっ」

パパの低くて機嫌の悪い声が、わたしの身体に突き刺さった

嫌だ

わたしは行きたくない

「さくらっ!」

パパがわたしの腕を強く掴むと、ベッドから引き摺りだそうとした

わたしはベッドボードに手をかけると、ぎゅっと掴んで、パパに引っ張られないように抵抗した