真央の赤いヘルメットを小脇にかかえて、僕はアパートの部屋に戻った

真央は布団に包まったまま、すでに寝ていた

僕は電気をつけずに、室内に入ると棚の上に家の鍵とヘルメットを置いた

『センセ、好きです。センセが好きなんです…どうしようもなく。ごめんなさい…ごめんなさい。センセを困らせるだけなのに』

僕はさくらに言われた言葉が脳内で蘇った

困ったけど、嬉しかった

なんでだろうな

他の生徒から告白されたり、ラブレターを貰っても『まただよ』くらいにしか思わないのに

さくらは違った

問題児と言われてて、僕だけがさくらの気持ちを理解してあげたからだろうか?

僕はさくらを特別視しているのだろう

さくらを理解してあげられるのは、僕しかいない…と優越感に浸っているのかもしれない

教師としてはいけないな

誰か一人を特別視してしまうなんて、よくない

けど…僕だって人間だし、みんな平等でって頭では思っていても心は違ってしまうのは当然なのかもしれない

他の教師もきっと理性で抑えて、他の生徒も平等になるようにしてるんだ、きっと

好き、嫌い…なんて、人間が生きていればうまれる感情だ

それは当たり前で仕方のないこと

それを今後、どうやって抑えていくかってのが問題だろう

僕は教師だし、さくらは生徒

婚約者を嫌がっているなら、教師として、何かしてあげられる方法を見つけてあげよう